その当日。
俺はドキドキしながら、きょうさんに針を入れた。

きょうさんは平然としてる。


「あ、そこはちげえ」

「そこはもっと細く」


きょうさんに細かく指示される事に、俺は「はい、はい」と返事をしていく。


完成したタトゥーは、まだまだ未熟なモノではあった。


あかりに入れたモノよりもずっと。


反省点はたくさんあった。


これから、それを修正しながら俺は向上していく。

一人前の彫り師になれる様に。



「なつ、やっぱ筋いいわ」

「本当ですか?」

「ああ、もっと上達したら雑誌とかお前出ろ」

「雑誌…」

「顔いいし、こりゃ集客になるぞ」

「……きょうさん」


少し、きょうさんの理由が不純ではあったが、俺にとっては願ったり叶ったりだ。

嬉しくないわけがない。


きょうさんの事だって、元はと言えば雑誌を見て感銘受けたのだから。