あかりからの連絡を待っていよう。
そう、決めてから数カ月が経った時だった。


「よし。なつ」

「はい?」


お客さんが帰った後、きょうさんが頭の後ろに両手を持って行きながら言う。


「そろそろ彫ってみるか」

「……いいんですか?」

「ああ、まずは俺に彫ってもらうけどな」

「きょうさんに?」

「まあ、最初は小さくな。俺の腕に彫ってもらう」

「……はい!」



ここで働き始めて一年以上が経った。
やっと、機材を持たせて貰える。

ずっときょうさんの背中を見ていた俺にとって、この上ない幸せだった。


「練習として誰か呼べるなら呼んでもいいから。
…あ、でも18以上な」

「わかってます!」




大きな大きな最初の一歩だった。