「…俺、あかりの事は諦めるわ」

「何で?」

「……諦めなきゃなんねえんだよ」

「……」

「会わなければ、きっと俺もあかりも忘れられる」

「…そうかなあ」


哲は独り言のように呟く。
俺もそれには返事しなかった。



「…とりあえず…ご飯食べるか」

「は?」


哲が急にそう言うから、俺は目を真ん丸にする。


「言ったろ?
腹満たして、そんな小さな事でいいから幸せになれって」

「……言ったな」

「だから、飯食べようぜ」

「く、くくっ」


満面の笑みでそう言う哲にじわじわと笑いがこみあげてくる。
哲が麻美ちゃんに急に拒否された時、

“失恋した時は飯食うに限る!
うまいもん食う!
そんで幸せになるんだよ!”

そう、言ったんだ。


今回の場合、俺が振ったんだけどさ。


でも、同じだよな。

めそめそしてたって、時間が戻るわけでもないんだから。