まあ、哲がそう言うならいいんだろうな。

「やべ、もう空だわ。夏樹、まだある?」

「早くね?」

「いいじゃん、ねえ、もう一本」

「ハイハイ」


五分と経たずにビールを飲みほした哲に冷蔵庫からまた缶ビールを持って来てやる。


「ありがと~」

「あいよ」


新しいビールを一口流し込んでから、哲は缶をテーブルへと置く。



「夏樹…辛いか」

「……」


急にそう言いだした哲。
準備も何もしてなかったから、俺は口に含んだビールをゴクンと音を立てて飲み込む事しか出来なかった。


そんな俺の顔を見て、哲は苦笑する。


「辛いかあ…。
だよなあ、好きだったもんなあ」

「……好きなんかじゃ…」

「え。違うの」

「……」


違う。
いや、違ってない。


心の中で何度も葛藤して、決めたはずなのに誰かに言うのはまだ気が引けた。



「いいんだって。夏樹。
好きなら好きで」

「…え」


思ってもない言葉に目をパチパチとさせる。