明らかに翳りのある哲を見て、俺は胸が痛くなった。

もしも、今願い事が一つだけ叶うのなら。


俺はきっと、麻美ちゃんを生き返らせてとお願いするだろう。



真っ直ぐ歩いているけど、力のない哲を俺は注意深く見守る。
並んで歩き、俺達は黙ったままファミレスへと向かう。


哲と一緒に住んでた家から少し歩いたとこにあるファミレス。
よく二人で来ていた。


その行き慣れたファミレスに入り、店員に案内される。
ふと、哲の方を見た。

哲は立ち止り、一点を見つめ目を細めていた。


それが。

麻美ちゃんを思ってだってわかるのが、酷く痛い。



ここで、何かあったのかもしれない。
俺は知らない。

だけど、わかってしまう。


そんな哲の腕を俺は無言で引っ張った。
我に返った哲は、引っ張られるまま俺の後に着いてくる。


あまりにも弱弱しすぎて、不安になる。
愛しい人がいなくなってしまうってことは。


ここまで人を弱らせてしまうのだろうか。