そんな感情。
いらないのに。


【夏樹。
麻美が死んだ】


そう、哲からメールが入ったのはあかりと付き合ってすぐのことだった。

メールでなく、電話をかけると哲はすぐに出た。

「おい、どういう事だ」

「……夏樹…」

その哲の声は酷く、弱弱しい。


麻美ってのは、哲が初めて一途になれた相手で。
俺と一緒に暮らしている時もずっと、麻美麻美と耳にタコが出来るほど繰り返していた。

そんな麻美ちゃんが、……死んだ?


「…麻美、悪性の腫瘍があったとかで…死んじまった」

「……哲、通夜いつだ」

「明後日」

「……行くから待ってろ」

「……ありがと」


掠れたその声。

哲の事だから…きっと、飯も食ってないはずだ。

心配だったけど、今日は仕事だ。
明日向かうしかねえ。


TATTO STUDIOに向かうときょうさんに無理言って通夜の日を休みにしてもらい、翌日を夕方にしてもらった。

仕事が終わると、俺は哲の元へ急いで向かう。


哲の事がただ心配だった。