俺、哲になりたかったんだ。









だから。
イライラしてたんだ。





いつまで経っても縮まらない距離に。



やっと目覚めたよ。
目覚めたのは俺の方だよ。






「えっ、夏樹?」




俺は哲を抱き締めて、肩を震わせていた。
哲は動揺しながらも、俺の頭を撫でている。



俺は子供か。



だけど。
今だけはそれが心地いい。




「ほら、仕事戻ろ?」


「…ああ」




顔を見合せて、笑ってから俺と哲は仕事に戻った。




それからまた二人でいるようになった。
心配されてたのか、知らない奴からも話かけられるようになった。



これも多分、全て哲のお陰だ。
だけど、もう僻んだりしない。



俺は俺なんだから。