わたしは、普通の学園生活が欲しい

真希と話しながら歩いて、漸く校舎についた。

敷地が広いから余裕もって出ないと、走ろうにも体力がきれるからね。

転移なんてしたら目立つしね。

このくらいの年だとできる人はほとんどいないから。

ユシャエルっていういかにもエリートです、みたいな顔した集団に入ってる人たちはできるんだけどね。

この集団に入ってるのはだいたいが高等部の人だけど。

ユシャエルっていうのは花の名前。

選ばれたもの、って意味があるらしいけど。

なんていうか、性格悪そうだよね。

いや、悪いうわさなんて聞かないけど。

だって、選ばれたってねえ

誰に? って感じじゃない?

それこそちやほやはされるけど、平穏なスクールライフを送ってたら縁のない人たちだから。

わたしの場合は極力避けてるしね。

一目でも見ようなんて努力はしないよ。

あんなギラギラしたなかにどびこむなんて、何かの拍子に眼鏡がとれたりなんかしたらたまったもんじゃないし。

この学園は共学のはずなのにユシャエルには男子生徒しかいない。

しかも全員顔の造形が整ってる。

いわゆる、イケメンってやつ。

おかげでその周りに女子が群がるんだよね。

ユシャエルの誰かが一般生徒の誰かに微笑みかけただけでも嫉妬の嵐。

たとえそれが男子生徒だとしても、だ。

だから平穏を求めるわたしは極力ユシャエルに関わっちゃいけない、って結論に至ったわけ。


ユシャエルの説明だけで大分時間使っちゃったな、もったいない。

今は校舎に入って、上履きに履き替えて、教室に向かってるところ。

いつも通り平穏だなあ、と思ってたんだけど……

訂正しなきゃいけないかな。

「キャァーッ!!」

「藤嶋様だっ……!」

「こんな近くで初めて見たよぉ!」

さっき言ってたユシャエルの一員。

藤嶋 祐哉って人が高等部の癖に何故か中等部の教室の前を通ってるから、女子の目がギラッと光る。

声はキラキラしてるけどね。

真希はおー! すごーい! なんてはしゃいでる。

って、避難、避難。

できれば視界にも入りたくないんだから。

ちょうどいいことに近くに女子トイレがあるし、藤嶋がいる今はがら空きに決まってる。

女子たちの間をスルッと抜けてサッとトイレに入った。

真希を置いてきちゃったけど、まあ大丈夫でしょう。

真希もユシャエルなんて有名人がいたら一目見たがるだろうし。

トイレなら言い訳もしやすい。


まだキャーキャー言ってる。

はやく藤嶋どっか行かないかな?


お、静かになった?

いなくなったっぽい。

真希と合流しよう。


どこにいるかなー?


あ、いたいた。

探されてるねえ。

「真希ー」

「あ、朱里いた!」

だいたいこんな感じでユシャエルは乗りきってる。