わたしは、普通の学園生活が欲しい

小説を読みながら待つこと30分くらいかな?

真希がやって来た。

他にも生徒が沢山歩いてるけど、真希は毎朝走りよってきてくれるからね。

顔をあげなくても来たことがわかるんだよ。

この広場についてから真希が来るまでの30分くらいの時間が、わたしは結構好き。

真希が来てからも楽しくて好きだけどね。


「おはよう、朱里!」

「おはよう、真希」

登校するのに丁度いい時間になってるからわたしも立ち上がって真希と並んで歩き出す。

まだ座ってるのはさっきのわたしと同じで一緒に登校する相手を待ってる子ぐらい。

だいたい毎朝同じ人だから一応顔見知り。

目があった人には会釈してからベンチを離れる。

「今日は何読んでたの?」

広場を抜けるか抜けないかというところで真希から質問。

わたしは本を見せて答える。

カバーかかってるからあまり意味ないんだけどね。

「学園もの。潜入捜査だよ」

「捜査官少女シリーズ?」

「そう」

わたしは捜査官少女シリーズの小説が好きなんだ。

実年齢は大人だけど、見た目は中学生か高校生ぐらいの少女っていう捜査官のおはなし。

今回は学園に潜入してるおはなしなの。

「また発売と同時に買ったんでしょ?」

「まあね」

ほんとは公爵家の権力を大いに活用させてもらってフライングしてるなんて言えない。

実際の発売日は三日後。

まだどこの書店にも並んでいない。

普段は発売と同時に時分で買いに行くんだけどね。

学園に中身24歳が潜入って、なんか親近感わいちゃうじゃない?

どうしても少しでも早く読みたくなっちゃったんだよね。

「えへ」

「いきなり笑ってどうしたの?」

「ううん、なんでもない」

「ふーん? 悩みとかあるんだったら聞くよ?」

「大丈夫、大丈夫。そんなんじゃないよ」

「ならいいけど」

いい子だわー。

ほんとに真希っていい子だわー。

「別にいい子じゃないしっ」

あれ? わたし言ってた?

でも赤くなって照れちゃって、真希ったら可愛い。

「か、可愛くないしっ。朱里のが可愛いし。」

「いやいや、真希さん。このわたしのどこが可愛いと言うんだい?
どっからどう見てもぱっとしない平凡女子でしょう?」

いやまあ、返答はわかってるんだけど。

「その眼鏡してるからじゃん」

この子とは付き合いも長いし、眼鏡とった顔を見せたことあるんだよね。

「これさえしてればぱっとしないでしょう?」

「……まあ」

ここで躊躇ってくれるんだよね、この子は。

「それ取れば絶対モテるのに、もったいない」

平穏なスクールライフが犠牲になるじゃない。

「モテたい訳じゃないし」

「なんで? ちやほやされてみたいと思わない?」

「思わない」

家に帰ればいやってほどちやほやされるっての。

パーティーでだって頼まなくてもされるっつの。

「朱里って、ほんと変なの。私はモテたいと思うのに」

「その気になればいくらでも相手いるよ、あんたは」

気づかないだけで。

真希のほうがわたしなんかよりもったいないって。

「それは朱里でしょ」

この話いつも堂々巡りになっちゃうから、だいたいこのくらいでお互い切り上げる。

「真希だけどね。そんなことよりレポート終わった?」

「あー、絵だけ」

「やっぱり……」

「だってさー」

「ほらほら、ぶつくさ言わない。見せたげるから」

「ほんと!? やった、ありがとー!」

真希はこういうのサボりがちっていうかわたし頼みにしがちなんだよね。

絵を描くのは好きみたいで上手いんだけど。

この子、わたしが休んだりしたらどうする気だったんだろう。