わたしは、普通の学園生活が欲しい

転移したらわたしは寮の自室の玄関にいる。

だって靴を履いてるから。

日本人なら室内は靴を脱がなきゃね。

その方が掃除も楽だし。

この部屋はあまり使わないから大して汚れないけど。


登校しなきゃいけない時間まではまだ余裕があるけど、もう部屋を出る。

だって折角敷地が広いのに散歩もしないなんてもったいないから。

わたしの部屋は寮の二階にある。

公爵令嬢だけどそれは隠してるからだね。

他の貴族の生徒は最上階に近い五階とか六階。


一階まで降りて出入口から出るときにいつもいる窓口のお姉さんに挨拶をする。

授業が終わって帰ってくる時には別のお姉さんになってるんだ。

多分時間で交替してるんだと思う。


寮を出ると道があるんだけど、その左右に青々とした芝生が広がってて寝っころがると気持ちいい。

公爵令嬢ってことを隠してなかったらこれは知れなかったことだと思う。

所々に咲いてる花とか、木とかも季節によって様子が違うから眺めるのも楽しい。

今は背の低い、小さな白い花が沢山咲いてる。

名前はメリースだったかな。

花言葉が秘密とか、秘めた想いとかなんだよ。


少し歩くと今度は花壇もある。

ここには色とりどりの花が綺麗に並べて植えられてる。

でもわたしは芝生に咲いてる小さな花の方がなんとなく好きだけどね。


また少し歩くと噴水の置かれた広場に出る。

この時間は人も少ないし、噴水を独り占めできる感じがしてこの広場にくると嬉しくなる。

他の時間だと人が多くて水の音もあんまり聞こえないしね。

今はサーって水のたてる音が離れてても聞こえて、清々しい気分になれる。


噴水の周りにはベンチが置かれてる。

わたしは毎朝このベンチに座って本を読んで待つんだ。

一緒に登校する親友の真希をね。

真希は初等部からの友達。

貴族以外で親しくなった初めての人。

黒に近い茶色の髪と灰色の瞳の可愛い女の子。

とってもいい子だ。

本人は気がついてないけど結構モテる。

髪と瞳の色をありふれた色に変えて、あんまり似合わない黒ぶち眼鏡をかけて、全体的にぱっとしない印象に仕上がってるわたしとは違うからね。

わたしの自慢の親友。

とかは恥ずかしいから直接言ったりなんてしないけどね。