お願い、真希。

こっち来ないで。

刈沼が話しかけてない女子はあなたしか残ってないんだから。

真希と話してたら刈沼と話すはめになるから。

お願いだから来ないでー......


そんな願いが聞き届けられるはずもなく、

「朱里! お昼食べに行こう!」

「......うん。」

こうなったら刈沼の方に念を送るしかない。


来るなー

来るなー

来んなー

来んじゃねーぞー


「なあなあ! お前は何て名前なんだ?」

「えっ?」

来るなって言ったのにーー!

「名前だよ、名前!」

「真希、だよ?」

「真希、かー。うーん、ピンとはこないなー?」

うん、それでいいからさっさとどっかに行きたまえ。

「あ、朱里ちゃん! じゃないアカリちゃんだよな!」

「え? うん」

もう早くどっかに行って!

「俺も一緒に食堂行っていいか!?」

「え......」

「いいよいいよ! ご飯は大勢で食べた方が美味しいもんね。刈沼くんも一緒にごはん食べよう」

ちょっと、真希!?
勝手に決めないでよ!

行動を供にする時間が増えるってことは相手を知るチャンスが増えてしまうってこと。

刈沼にそんなチャンスを与えたら共通点とかに気づいちゃうかもしれない。
海先 朱里と同一人物かもなんて思わせる発言されたら、真希まで変な勘を働かせちゃうかもしれない。

「でも、刈沼くんを誘いたいって人も他にいるみたいだし」

侯爵とお近づきになりたいって思うのは自然なことだ。

さっきから様子を伺ってるクラスメイトがちらほら。

廊下からちらちら覗いてるのもいるし。

別にわたしたちと食べなくても相手は溢れかえるほどいるでしょ。

「いいんだよ! 俺はアカリちゃんと真希と食べたいんだからな!」

ああ、もう。
本当に素直なんだから。

貴族ならもう少し人間関係とか体裁とか、それらしく気にしなさいよ。

わたしでももう少し気にしてとり繕うのに。



────作者より────

以下準備中......