魔法の実技の授業でもわたしは端の方で地味に練習している......

フリをしている。

「───ブルーファイヤー」

詠唱も唱えて、最後に魔法名。

出来たのは所々青いけど、全体的には赤い炎。

勿論これは失敗も同然。

けど少しでも青い部分があるだけで喜ばなきゃいけない。

「あっ! ここできてる!」

みたいな感じでね。

大抵の子がそんな感じだし、先生もそれで褒めちゃうからね。

もちろんわたしは真っ青な炎だって出せる。

というか、この魔法考えたのはわたしだから。

あの全能の魔法師が編み出した火属性魔法! なんて紹介されて学生は練習させられてるわけ。


あえて不完全な魔法を発動するのって、結構もやっとする。

だから魔法の実技の授業があった日は、帰ってから思う存分訓練する。

ちゃんと結界を張ってからね。


真希はというと、殆ど青い炎。

たまに赤いのがふわって出てくるけど、ほぼ完成形。

「結構いい感じ」

自分でも手応えを感じてるみたい。

先生も他の子にお手本として見てみろ、って言ってる。

さすが真希。

......魔法じゃなくて真希を見てる子もいるけど、気づいてはいないんでしょうね。


こんな感じで魔法の授業も終わる。

そしたら教室に戻って、ホームルームやって、解散。

わたしは真希と一緒に寮に向かう......前に学園の敷地内にあるクレープ屋に行くことになった。

真っ直ぐ寮に帰る日もあれば、今日みたいに寄り道をする日もある。

さっきパフェも食べたのに真希はまだ甘いものが食べたいらしい。

わたしはあんまりお腹空いてないし、そこまで食べたいとも思わないんだけど。

まあ、甘いものは好きだから食べれるかもしれないし、駄目そうだったら残りは真希にあげちゃえばいっか。

「食べきれなかったら残り食べてくれる?」

「食べる食べる! じゃあ違う味のを頼もうね!」

もう真希の中ではわたしのクレープも食べることが決定してる。

可愛いねえ。

「だから、可愛くないしっ!」

「ん? また言っちゃった? ま、いっか」

「よくないってば」

頑なねえ。

さっさと認めればいいのに。

「もう、あたしなんかより朱里の方が可愛いのに」

「だからー、わたしは冴えない感じになってるでしょ」

「でも眼鏡とれば絶対モテるよ!
ユシャエルの人だっていけるよ、きっと!」

いや、それは遠慮したい。

「今絶対そんなのいい、って思ったでしょ」

「よくわかるね」

「そんな顔してた」

「あらまー、そうだった?」

だってねえ? ユシャエルの誰かと、とか。

うん、ない。

ないわ。

「もーいいよ。どうせ眼鏡取る気はないんでしょ」

珍しい。

真希の方から話を切り上げた。

「だったらクレープ食べる方が大事」

ああ、もうクレープ屋につきそうだからか。

素直な子。