四分の三くらい、真希に食べられた。

まあ、もとから少食気味だからいいんだけど。

デザートまで食べ終わったらトレーとお皿を返して教室に戻る。

「あれだね、最後の方はちょっとスイートポテトっぽかったね」

うまかった、と笑う真希。

美味しかったと言いなさい、って何回か言った気がするんだけど。

「そうだね、値段の割りに小さかったけど」

「だよねー。
ここの食堂、もう少し安くならないかねえ」

こんな会話が楽しい。

貴族同士なんかではこんな話、絶対できないし。

寧ろ安価過ぎないか、とか使ってる食材の質が低い、とかそんな話ばっかだと思う。

庶民の学生ってのがやっぱり学生らしくていいよね。

「なに笑ってるの? なんか楽しいことあった?」

「うん、楽しい楽しい」

「ふーん、そっかあ。よかったね」

よく分からないはずなのに嬉しそうな真希って、やっぱりとってもいい子だと思う。


今日は午後の授業は二時間とも魔法の実技。

魔法の得意な子は楽しそうだけど、苦手な子は地獄とか言ってるみたい。

わたしは全能の魔法師とか言われるくらいだから学園でやるようなレベルはいまいちやりがいを感じないんだけど、やりがいよりも平穏の方が大事だから様子をみつつ平均であろうとしてる。

ある意味魔法の制御の訓練にはなるかもね。

実戦なんかだったら命取りになるかもしれないけど、そうでなければ単なる誤差で済ませられるちょっとした加減の違いで目立ちかねないから。

威力の精度は磨ける。

勿論、朝やってるような訓練の方がずっと効果的だけどね。

「朱里、早めに魔法館行こう?」

「真希は早く練習したいだけでしょ?」

「あ、バレた?」

「うん」

魔法館っていうのは魔法を防ぐ結界が常時張られてる体育館みたいなところ。

魔法の実技の授業はいつもここでする。


「はやくはやく」

「はいはい」

さっきからわたしを急かしてくる真希はこの授業が好きらしい。

真希は魔法が得意。

一番とか二番とかいう成績なわけではないけど、上から数えた方が早い。

それでも中級の上位にあたる魔法がなんとか発動できる、って感じだけどね。

学生の、それも中等部ならこれで十分みたいね。

一位とかの生徒は上級も扱えるみたい。

そういう子は高校にあがると同時にユシャエルに入るみたいね。

うん、真希がトップとかじゃなくてよかった。

女子の場合ユシャエルには入らないらしいけど、ユシャエルとの関わりがかなりあるみたいだから。

目立って目立ってしょうがないユシャエルと関係のある子と親友なんて、もう目立つしかない。