「す、すいません!!勘違いしてたみたいです!では!」
恥ずかしい恥ずかしい。
そんな言葉が頭上を過る。

しかも相手は知らない人なのに。
初対面でこれって。
ほんとツイてない。

「待って!」
ガシッと。
前に進めない。
そうだ、腕を掴まれたんだ。

「なにか用でも…?」
「もうさっきのことは気にしないで良いからね?あと… トイレってどこかな」

ト、トイレ⁉︎
この状態でトイレって…
クス、と。思わず笑ってしまったら。

笑うなよ〜って、 軽く頭を叩かれた。
なんだか楽しい。

「トイレは靴箱を曲がってまっすぐ行ったらありますよ!!」
「ありがとう!僕の名前は立花悠斗です、今高2ね!」
「こ、高2!? もしかして誰かのお兄さんで文化祭を見に来たとか…」
「そうそう、あたり!1年の立花深雪って知ってるかな?」
「すいません、知りません」
「ああ大丈夫!そんな有名な人でもないから」
はははと笑いながら、じゃあもう行くねって。今日はありがとうって
校舎の中へと消えていった。


ああ、こんな時間がずっと続けば良いのに。
密かにそんなことを思いながら体育館へと戻った。