文化祭。
天気予報とは真逆に晴れた空が広がる。
ん〜!と背伸びをしながら起き上がる。

「やば、遅刻」
目覚まし時計を見てハッと。

文化祭本番なのに。
やばいやばい、と急いで制服に着替える。
携帯を開けば何通ものメール、又は電話。

そりゃそうだ。朝7時に練習しようってミユと約束してたから。でも時計の針はもう8時を指していた。

階段をダダダダダと音を鳴らしながら降りれば何故か上機嫌なお母さんが皿を洗っていた。

「お母さん弁当っ、早く‼」
急に言ったら、さすがのお母さんもビビる。でもそんなことお構い無しに弁当を待つ。
「ええっ、ちょっと待っててね。…はい、ミホ朝ごはんは?」
「いらない!じゃあお母さんまたあとでね!」

そう言って家を出る。

プルルルル、プルルルル♪
…ミユからだ。

「も、もしもし」
『「もしもし」じゃないよー!ミホてば何やってんのぉ』
「う…ごめん寝坊した」
『も〜。早く、来てよー?』
「はーい」

プツッと。
電話が切れる。

家から学校まで、別に遠くはなかったから良かった。
ほら、もう着いた。

ガラガラーっと、ドアを開ける。

「ミ〜ホ〜」
なんてジト目で見てくるミユに謝る。

「ごめん、っば〜」
「もうっ、あたしがどんだけ待ったと思うんだようっ」
「ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい、でした」
「謝る気な!!」
ケラケラ笑いながら言うミユにつられて笑ってしまう。

てか、それより。

「…ねえミユ。昨日大丈夫だった?」

昨日はミユも大変で。好きな人が目の前で他の女の子を抱き締めてたらしい。
そう聞いたけれど、何か引っかかる。ミユの好きな人はリクで。でも、リクはそんなことするはずない。だってこの前、ミユが好きだって教えてくれたもん。

「え、あ。うん!大丈夫!!」

こんなに明るくてニコニコ笑ってる女の子だけど、ホントは寂しがりやで弱虫なんだ。
だから私が守らなきゃって思ってる。

「でも、ね。ホントはちょっと悔しい。リクくんも、あたしと同じ気持ちなのかなって、思った矢先だったからさ」
「ミユ…」
「結局、あたしの勘違いだったけどね。自惚れすぎたかなあ」
ニコニコ笑ってるけど、目は笑ってない。

そんなミユとの会話は、肌寒い教室をもっと寒くした。

「無理しなくていいよ、ミユ」

泣きたいなら、泣いても良いよって。
「…う…う、わあああああんっ、…わあぁん」

今まで分の涙を出すように、泣きじゃくるミユをそっと見守った。

今の自分には、それしかできないから。