あたたかい場所


「まだですか?」

「まーだ。ここは広いんだよ」
テレビ局の中に入ったはいいものの、とにかく広い。

人も多い。クリスマス時期のデパートぐらいの人の多さだ。

少しよそ見でもすれば神田さんを見失いそうだったから、後ろにぴったりついて歩いた。


しばらく歩くと、たくさんの部署がある部屋に着いた。


「すいません、ミラクル芸能事務所の神田ですが。関口さんはいらっしゃいますか?」

神田さんが近くにいた女性に声をかける。



「神田様ですね。お世話になっております。ご案内しますね」
「いいですよ、いつもの所ですよね?」


「そうですが…」
「分かるので大丈夫です。ありがとう」


そう言って笑顔を向けた神田さんに、女性は胸打たれていた。




…神田さん、結構ちゃらい?


満足したみたいに少しリズムを踏んで歩く神田さんに、少し笑った。