あたたかい場所


「言う。美紗がやらなかったから数学2だったんだよ」

「そんな昔のことをネチネチと!そんなんやったら彼女出来ひんで!」


「大丈夫。彼女には優しいから」
「うわぁ。あかん奴やな」

あかん奴なのはどっちだ、と思いながら、
食べ終わった丼ぶりをシンクに片付けてくれたから、良しとする。


「まだ飲むやろ?」

「うん。ビール持ってきて」
美紗は結構お酒が好きなようで、大ビールを既に四缶空けている。

おじさんに似て酒は好きで強いみたいだ。


「美紗、明日仕事は?」


「えっとなぁ、朝から雑誌の連載の撮影やろ。昼間は新曲用の楽器揃えるからその打ち合わせ。
そんで夜は練習やな」


「なのにそんな飲んで大丈夫?酒臭いと思われるよ」

「大丈夫や!朝って言っても十時半からやし、気にせんでいい」


いや、気にするべきだと思うけど。


あ、そうか。メンバーは美紗の酒の匂いなんて慣れてるのか。