あたたかい場所


「おい、上行くぞ。曲作りの続きしろ」
神田さんが二人に言う。

「わかりましたよ~」
去ろうとする翔さんの後ろを歩き出した晴輝さんのジーンズのポケットから、一枚のメモが落ちた。



「HARUKIさん、落ちましたよ」

メモを拾って差し出すと、晴輝さんは受け取ろうと手を出してから、
“あ~”とバツの悪そうな顔をした。


「捨てといてもらっていい?」
「いいんですか?」

「要らないから」
「分かりました」



「ありがとね」

最後に笑って晴輝さんは事務所の階段を上って行った。