美紗がずっと頑張ってきた音楽、そのプライドが、ズタズタに切り裂かれた。
なんでこんな仕打ちを、美紗が、HOT HEARTが、受けなきゃいけない?
何の為に、傷つけるんだよ。
何のメリットがあって、美紗たちを傷つけるんだよ。
ならわざわざ、チケットを取るなよ。
そんなやつが一番前で、美紗たちの音楽を聞く資格なんてないよ。
泣いている美紗を見ていると、その男に言いたいことがたくさん浮かんでくる。
だけど、文句を言っても美紗の悲しみは拭えない。
分かってる、僕が何をしても意味がないのは。
だからただ黙ってた。
ひとりにすれば今すぐにどこかへ行ってしまいそうで、近くにいるかわりにそっとしておいた。
美紗は立ち直れるのかな…
また歌えるのだろうか…
そんな不安が頭にこびり付く。


