明日からも仕事はあるし、ツアーの準備だってある。
もう夜も更けている。
早く帰って体を休ませないと…。
でも、美紗は?
美紗は明日からの仕事を、通常通り続けられる?
また一から始めようとしていた瞬間を壊されて、それでもまた、やっていける?
「美紗は?」
「え?」
「美紗はどこにいるんですか?」
「舞台裏にいる」
神田さんの言葉を聞いて、即座に楽屋を出ようとしたら腕を掴まれた。
「今はそっとしといてやれ…」
今美紗をひとりにするなんて、考えられない。
僕は神田さんに掴まれた腕を振りほどいて、走った。
舞台裏まで、必死に、必死に、走った。


