そのあと、騒ぐファンの中にその男は消えて行ったとユリアさんは言った。
ユリアさんは今日のライブを、本当に楽しみにしている様子だった。
自分の後輩が、また再出発する瞬間をきちんと目に焼き付けたかったのだろう。
それなのにこんなことが起こって、ファン同然のユリアさんは相当ショックに違いない。
楽屋のソファーにユリアさんが座り込んだ時、楽屋のドアが開いた。
楽屋に入ってきたのは、暗い顔をした彩芽さん、翔さん、晴輝さんと、神田さん、千晴さん。
あれ…美紗は…?
「ユリアさん、せっかく来てくれたのに、ごめんなさい…
こんなことあってガッカリさせちゃって…」
「彩芽が謝る必要なんてないでしょ?」
「でも…」
「とりあえず、帰る用意しろ」
神田さんが厳しい声で言った。


