「違うよ、美紗」
「馬鹿にせんといてや!」
「美紗!」
美紗は事務所の外へ出て行ってしまった。
「私、追いかけるね…」
千晴さんが美紗のあとを追っていく。
美紗のあんな悲しそうな顔、初めて見た。
いつもは強気な美紗でも、やっぱりアンチの意見は気にしてしまうんだろうか…
そのあと、美紗は千晴さんと一緒に事務所に帰ってきた。
たまに力なくも笑顔を見せていて、千晴さんが追いかけてよかった、と思う。
「聡、コーヒー淹れてくれへん?」
美紗がいつも通りに言ってきたから、すぐにコーヒーを淹れた。
もう何の音沙汰もなく、時間が過ぎてほしい─
それが僕の願いだ。


