あたたかい場所


「今年は、海行けんかったな~」

美紗がビールを飲み干して一言。



今は八月の中旬。HOT HEARTは八月中にまだいくつかのイベントにも出演するし、忙しい。

時期的にも、今年はもう無理だろうな。


「聡とも行ったよな」

「そうだっけ?」

「あ、知らんふりしたな?クラゲ見つけて泣いとったやんか!」
ケラケラと可笑しそうに笑う美紗に一瞬ムカッとする。



「お前だって焼けすぎて一人だけ黒人だっただろー」

「それ言うか!?うちあの時の写真誰にも見せられへんねんで!?」

「笑えなかったもんな。あの黒さは」
ププッと美紗を見て笑ってやった。

軽く睨まれるということは、かなり気にしているみたいだ。


僕だって、クラゲごときで泣いたなんて知られたくないけど。



そのままギャーギャー言い合いをしていると、社長が笑い出した。