時の姫と月

そーいえば、なにも説明してなかったっけ。

「僕は交換屋だからね!何でもいいよ。お金持ちになりたいとか、仕事を成功させたいとか」

君の場合は頭がよくなりますように、とか?ふふふ!
う~んと唸っている女性。僕はシルクハットをクルッと回し、中からキャンディーを取り出した。甘味が口に広がる。

「おいひ~♪」

「あっあの!決めました、願い!」

「えっ?頭がよくなりたい?」

「違います!!私もう大人ですよ」 

…違うの?確かにもう40歳はこしてそうだね。

「弟の病気を治してください!!」

ああ、なんだ。つまんないの。

「じゃまずはその弟さんに会いに行こうかな」

「でも今は夜だし、病院に入れませんよ?」

「僕がどうやって家に入ってきたか、教えてあげるよ!」

さっきと同様に“力”を使って真っ黒な扉を出した。ちなみにこの魔法は僕だけが使える空間魔法。すごい魔法なんだよ?

「えっ…!?なっ何今の!?マジック?」

「魔法だよ、魔法」

人間は信じないからな~、魔法。
女性は扉の周りをグルグル回っている。ま、非現実的なことがあれば誰でも驚くよね。

「あっありえません」ぽつりと呟く。でも実際そこに扉が存在しているのに、どうして否定するんだろ。