ドアを閉めると、そのすぐ脇には卜部さんが立っていた。 「よかったですね。命に別状なくて」 そう言うと、水を含んだハンカチを差し出してくれた。 「目、腫れますよ」 「……ありがとう、ございます」 男物、だ。 気を遣わせてしまったみたいで、何だか申し訳なくなる。 濡れたハンカチを目に宛がうと、止めようのなかった涙がすうと引いていくような気がした。