「――馬鹿」 呟かれた単語に、咄嗟に顔を上げる。 彼女は床に膝を突き、横たわる静さんの手を包み込むように握っていた。その表情は、窺えない。 「馬鹿だなぁ……舌噛んだくらいじゃ、死ねないよ……」 彼女の声は、震えていた。 ……泣いているように見えた。 「……」 何となく、ふたりにした方がいい気がして、俺も病室を後にした。