「――行きましょ。車、手配出来てるから」 睨み合う俺と彼を引き離すように、彼女は言った。 それきり、誰も口を利かなかった。 俺も、何も喋る気に離れなかったし、なにより。 この状況で口に出来る言葉なんて、俺は持っていなかったから。 沈黙を背負ったまま、エレベーターホールを抜け、エントランスへ。 正面玄関、ガラス張りの回転扉を潜ると、黒い車が目に入った。そのすぐ脇には、刑事らしき男たち。この車は覆面パトカーらしい。