彼女は受話器から伸びるコードを弄りながら、 「このコード、右に捩れてる」 「……あの、つまりどういうことですか?」 俺の理解の届かないところで進められる会話に、俺はとうとう口を挟んだ。 「キミ、右利きだったよね。電話掛けるとき、どういう手順を踏むか思い出してご覧?」 (電話を掛ける、手順?) 彼女に言われるがまま、監察官のデスクに据えられた、遺留品ではない電話に手を伸ばす。