「鑑識の結果、採取されたのは被害者の指紋、血液のみ。他のものは一切発見出来なかったそうです」 「中身は?」 「同型の機種のものと全く変わりませんでした。過不足なく」 彼女はビニール袋の端を摘まみ上げ、裏側を覗き込んだ。 電話を引っくり返すことをせず、自身の頭上に持ち上げて見上げている。奇妙な構図だ。 ふと、彼女は何かに気付いたようで、 「イツキちゃん、手袋貸して」 目の色を変え、言った。