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 移動中の車の中で手渡された手袋と嵌め、現場へと足を踏み入れる。

 黄色い『KEEP OUT』のテープを潜ると、俺は思わず息を止めた。

 噎せ返る、血の臭い。

 決して広くはないワンルームマンションの一室は、捜査員や鑑識でごった返している。

 ついさっきまで生活していた形跡のある部屋。

 少し散らかった、よくある、そう、ありふれた普通のひとり暮らしの部屋なのだ。

 フローリングの床の真ん中に形取られた、白いロープ以外は。