「五十嵐斎(いがらしいつき)と申します。以後お見知り置きを」 「は、はぁ……」 表情をぴくりとも変えずに、酷く丁寧な口調で彼は言う。 かと思えば、五十嵐という彼はすぐに彼女の肩に手を置き、 「夜魅、早速ですが……」 「ウン。分かってる」 驚いた。 何がって、まず、五十嵐が彼女を名前で呼んだこと。 ふたりの間柄は、ただの同僚というだけではないような気がする。 (まあ、俺の主観だけど)