「わ、わかったよ!今だけ置いてってやる!明日の朝に持っていくから、それまでに読めよ!」
焦りを悟られないように、ぶっきらぼうに言った。
彼女はぱっと目を輝かせた。
「ありがとう!君って優しいね!」
「…あのなぁ、俺は3年だぞ?お前、見たところ1年生だろ。敬語くらい使えよ」
「違うよ。私も3年生だもん」
…え?
怪訝に思った。
彼女のネクタイの色は赤色。
うちの学校のネクタイは、1年は赤、2年が緑、そして3年が青…と決められている。
赤ネクタイの彼女が3年生なわけがないのだ。
「あのなぁ…じゃあ名前を教えろよ。3年にお前みたいな奴見かけたことないぞ?」
「…名前は、ないよ」
名前がない?
不思議ちゃんなのか?
