足を踏み込むたびに、床がギシギシと不快な音を立てる。

ここ……旧校舎は、今では出入りする生徒なんてほとんど見かけないくらい人気がない。
10年前くらいからずっと変わらずに放置されてろくに掃除もされていない木造の校舎は、もうすっかりボロボロになっていた。


「あぁもう…普通こういう仕事は図書委員がやるもんだろ…」


誰もいない廊下をぶつぶつと呟きながら歩く。

俺は図書委員ではなく学級委員だ。
と言っても、その学級委員も実際のところは俺がクラスメイトから押し付けられた役目だった。
「楓は頭がいいから」「楓はしっかり者だから」なんて言葉で丸め込められ、気がついたらそのようになってしまっていたのだ。


自分の流されやすい性格には、もううんざりしている。




「そういえば、旧校舎の図書室ってあんま来たことないんだよな」


『図書室』と分かりやすくプレートのかかった教室。
最後にここに来たのはいつだったっけ…なんて考えながら、ドアノブに手をやる。

異様な空気を感じたのは、その時だった。



全身に寒気が走り、一瞬目眩がした。


「う……っ寒……!冷房なんて付いてないはずなのに……早く済ませよう」



俺はそう呟いて、急いでドアを開けた。