「はぁ……ルリちゃん、速すぎっ」
走って走って走りまくって、何分経っただろうか。
渉くんが疲れたように、あたしの手を払いのけた。
そのおかげで、あたしはようやく立ち止まった。
「……ご、ごめんっ」
「ったくー、いくら守がいるからって、そんなあからさまにしなくても。」
少し意地悪に笑いながら、渉くんは言った。
「……そういうわけじゃっ」
「いーや、そうだね。だってルリちゃん、まだ守のこと好きでしょ?」
「…………」
渉くんの鋭い意見に何も言い返せず、あたしは黙って肯定した。
……まだ。
きっとあたしはまだ、守先輩が好き。
たまに廊下ですれ違ったり、目が合ったり、笑っている姿を見たり。
同い年じゃないから教室が近くはないけれど、そういう何気なく会った時に高鳴る胸は、まだ吹っ切れてないことを示してる。
もしかしたら、恋愛感情なんかじゃなく、その時の気持ちを思い出してドキドキするのかもしれない。
何にしろ、きっといつか、思い出になっていって。
あぁ、『恋に恋していた』んだなって。
いつか笑い話に出来るはずだから。


