脱☆年下系男子







 好きな人を姉にとられる。


 絶対、辛かったはずだ。

 あたしが想像する以上に、苦しくて、悲しかったんだろう。



 だけど悠夢は、笑顔だった。

 応援してくれた。



 あの時も、あの時も。




「あたし、言えなかった。お姉ちゃんの彼氏の名前を、聞いた時……知ってる人だって、言えなかった」


「うん……」


「だって、好きな人だったんだもん……嘘だと思った。夢だと思った。そう…信じたかった」


「…………」



 悠夢は泣きそうになるのを我慢しながら話す。

 声が、震えている。

 肩が、震えている。


 その姿を見て、何も言えなくなった。



「お姉ちゃんが幸せそうに笑ってると、悲しかった。別れちゃえばいいのにって、幸せを潰したいって、思ってた。……何度も、何度も。最低だよね……っ」


 悠夢は雑巾を握る手に力を込めた。


 あたしが笑ってた時、悠夢は泣いていたのかな?

 渉くんと笑い合っていた時、悠夢は独りで苦しんでたのかな?


 あたし、なにも考えてなかった。

 悠夢の様子が変だって気づいてたのに、声を掛けなかった。

 なんなんだろう、としか思わなくて、悠夢と話そうとしなかった。


 もしもあたしがもっと早く話していたら……悠夢はこんなに苦しまなかったのかな?