脱☆年下系男子






 さっきまでの強さを捨てて、立っていた。


 俺に、伝えたいことが通じたのを悟ったのか、渉は鞄を持つと、


「今追いかけても意味が無いと思うから、止めとく。守、もうちょい強く殴ってもよかったぜ?」


 そう言った。




 俺は渉に、


「あっそ。でもまぁ、負けねぇ。…じゃあ、もうちょい強く殴るわ。」

 と、言って胸倉をまた掴んだ。




 渉にもなにかあったと分かった。


 けど、畑を傷つけたのは変わらない。

 追いかけないのも、変わらない。




「おい!そこでなにしてる!!」


 誰かが呼んだのだろうか?

 教師が走ってきた。



 俺はそんなこと気にせず、渉の胸倉を掴む手に力を込めた。




 今から殴るのはよ……そういうことだ。


「歯、食いしばれよ」


「言われなくても分かってる」



 この一発は、畑の辛さのほんの少しだ。

 この一発は、畑の心の傷の、ほんの数mmだ。

 この一発は、畑の胸の痛みの、ほんのちょっとだ。




 俺はぐっと拳に力を込めると、すごい勢いで振り下ろす。







 ほんの、ほんの……辛さ、傷、痛みを知れ。