さっきまでの強さを捨てて、立っていた。
俺に、伝えたいことが通じたのを悟ったのか、渉は鞄を持つと、
「今追いかけても意味が無いと思うから、止めとく。守、もうちょい強く殴ってもよかったぜ?」
そう言った。
俺は渉に、
「あっそ。でもまぁ、負けねぇ。…じゃあ、もうちょい強く殴るわ。」
と、言って胸倉をまた掴んだ。
渉にもなにかあったと分かった。
けど、畑を傷つけたのは変わらない。
追いかけないのも、変わらない。
「おい!そこでなにしてる!!」
誰かが呼んだのだろうか?
教師が走ってきた。
俺はそんなこと気にせず、渉の胸倉を掴む手に力を込めた。
今から殴るのはよ……そういうことだ。
「歯、食いしばれよ」
「言われなくても分かってる」
この一発は、畑の辛さのほんの少しだ。
この一発は、畑の心の傷の、ほんの数mmだ。
この一発は、畑の胸の痛みの、ほんのちょっとだ。
俺はぐっと拳に力を込めると、すごい勢いで振り下ろす。
ほんの、ほんの……辛さ、傷、痛みを知れ。


