風はしゃがんで、渉を見る。
そして、
「ごめん、守」
と、謝りながら渉を殴った。
「……もう、いい。」
渉は立ち上がって、俺を見た。
「ルリちゃんのこと、俺がどんだけ好きか守は知らねぇのかよ。」
「……すごい好きなの、知ってるよ。だから、俺は負けた。けど、今のお前だったら勝てる」
「いいや、守は勝てない。だって、俺の気持ちは変わってねぇからな」
そう言った渉の顔は、自信に満ち溢れていた。
俺は、残念ながらこいつの兄だ。
渉は嘘をついてないって、分かってしまった。
でも、他の奴には分からないだろう。
俺は少し不思議になる。
気持ちが変わってないのに、なんで渉は浮気したんだ?
「だから、そういうのが嫌いなんだって」
風は立ち上がって、渉を睨んだ。
けれど渉は、風を無視して俺に話しかける。
「だから、渡さない。……守、お前なら分かるよな?兄弟だから。」
俺はただ、茫然と立ち尽くす。


