自惚れかもしれないけど、あたしには全部が嘘のようには思えないんだ。




「渉くんー……!うぅっ」


「泣き虫ちゃん、みーっけ!」


「……え?」



 突然、頭の上からそんな声が聞こえてきて、手が目の前に出された。


 あたしは顔を上げた。



「あっ……」


「よっ!」


 その人は、額のところでピースした。



「三尾先輩……」


「ほい、立って」



 目の前には、相変わらず明るい顔している三尾先輩がいた。


 頭が混乱しているあたしは、手を差し出して掴むように催促する三尾先輩の手に、手を重ねた。


「うぃーー」

 三尾先輩は、あたしの手を握って、あたしを立たせた。



「……なん、で」


 あたしは、自然とそう口にしていた。



 でも本当に、なんでしか出てこない。