渉くんは申し訳なさそうに言った。
ほんの少し顔を上げると、あたしは首を横に振った。
「違う、逆に考えることが出来たの。今まで盛り上がっていたから分からなかった、〝本当の好き〟を」
そしたら分かったの。
「もしもあたしの知らない守先輩だったら?あたしはそれでも、彼を愛せるかって。……あたしは」
あたしは、本当の守先輩を、あたしが好きじゃない先輩を知ったら。
「きっと、あたしの好きな先輩じゃなかったら愛せなかった」
でも、それって守先輩を好きってことじゃないよね。
あたしは、理想の先輩を好きだっただけ。
「本当の守先輩を好きじゃなかったんだよ。あたしは、恋に恋してただけなんだよ。」
「ルリちゃん……」
「それで付き合うとか、無理じゃん……」
あたしは目に溜まった涙を隠せずに、出してしまった。
「……きっと、守先輩は分かってたんだと思う。だから、フッたんだ。もし付き合えたとしても、あたしは本当の守先輩を知ったら別れてたと思う。」
あたしが好きだった守先輩は、優しくて大人で。
その魅力が無くなったら、あたしは好きじゃなくなる。
守先輩が好きじゃなかったんだ。
優しくて大人な〝人〟が好きだったんだ。


