「お父さん、そこってどんなところ?」

「いいところだぞ〜、静かで」

「鹿いるかな、鹿」

「いるいる、めっちゃ居る」

「へえ、なんか楽しみ」

5年ぶりに再開を果たした父との会話は、きっと今まで毎日話していた母との会話よりも、ずっと親子らしい会話だった。

あたしの名前は、朝倉なな。

中学時代は中高一貫の私立の女子中に通っていたのだが、母の4人目の再婚相手と馴染めず、それと同時に学校にも馴染めず、高校からは公立の高校に行くが馴染みすぎて、遠慮を忘れ結局高校生活も大失敗。


不登校になった末、母が一番最初の父に相談をして、それなら俺のところへこい!と言うことで、父の住むド田舎へと車で只今引越し中ということだ。

車から見える景色は、綺麗な段々畑。

なんか、いいなぁ。

そう、心が落ち着いていくと同時に、自分って、逃げてばかりの駄目な奴だな、なんてネガティブなことを考えてしまっていたりする。