トレモロホリディ

仕方なく一緒にカーテンのコーナーに向かった。


遮光カーテンって本当はあんまり好きじゃないんだけど、仕事上やむを得ないよね。


それにしても、遮光カーテンって遮光度も様々で結構種類が多いんだね。


「迷っちゃうな。どれにしようかな」


「俺は一番遮光度が高いヤツにしてるよ。

だから昼間でも部屋はすげー真っ暗だよ」


夜の仕事だと、昼間きちんと眠れるかどうかは死活問題だ。


「うーん、どうしようかな。

そこまで真っ暗でなくても、眠れそうな気はするけど…」


「じゃあ、これは?」


そう言ってミナト君が指差すのは、明るい黄色の花が描かれた可愛らしいカーテン。


「わぁ、こんな柄付きのもあるんだねー」


「これ、ミナちゃんっぽい気がする」


え?


私っぽい…?


こんな明るいビタミンカラーが私っぽいって言うのは、ミナト君くらいじゃないかしら。


私って昔から特に目立たないし、ごくごく普通の、風景に溶け込んでしまうような人間だもの。


どっちかっていうと、派手よりは地味だと思うし。


「これ、嫌い?」


「ううん、好きだよ。

部屋が暗くなり過ぎるのはイヤだし」


「じゃあ決まりかな?

マジで、ミナちゃんはこういうイメージだよ」


にっこり笑うミナト君。


そか。


ミナト君がそう言ってくれるなら……。


ーというわけで、私のカーテンはあっという間に決まってしまったのだった。