トレモロホリディ

そこからはもう。


何も考えられなくなっていた。


湊君は全てにおいてソフトで。


そして、気づいた。


湊君は次への行動に移す時、必ずキスか手を握ってくれる。


それがあるから、怖くないんだ。


ずっと密着している安心感があるから…。


元彼と比べてはいけないけれど、


こんな優しい愛撫をされるのは、生まれて初めてだった。


自分から出て来る甘い声に、自分が一番驚いてしまう。


「ねぇ…、美菜ちゃん」


「ん?」


「どうする…?

続き、する?

それともやめる?」


「え…?」


「ここまでは大丈夫みたいだったけど。

この先は怖いんじゃない?」


「あ…」


いやあの…。


最初は怖かったけど。


今はむしろ…。


だけど、それを改めて聞かれると、


したいです~とは言えないでしょ?


ど、どうすれば?


「大丈夫なら、俺はこのまましたいけど…。

美菜ちゃんは…?」


えぇっ?


それを私に言わせるの~?


い、言えないよう。


言えるわけがない。


「美菜ちゃん、顔が真っ赤だ。

う~ん。

じゃあ…さ。

大丈夫なら、美菜ちゃんからキスして」


「え…」


も、もうっ。


そ、それはそれで恥ずかしいじゃないか。


湊君は、ただ優しい瞳で私を見つめてくれている。


いい…よね?


私。


素直になっていいよね?


一度目を閉じて、軽く深呼吸すると。


湊君の頭に両腕を回して。


ちゅっと軽くキスをした。


そのキスに、湊君が嬉しそうににんまりと笑う。


「了解、お姫様」