トレモロホリディ

「美菜ちゃん…」


「ん?」


「ちょっとだけ、試してみない?」


「え…?」


「俺とでも…イヤかどうか…」


「えぇっ!」


ちょ、ちょっと待って。


「イヤだったら途中でやめてもいい…」


「で、でも…」


思わず身構えると。


私の頭に置かれていた湊君の手が移動して、そっと指先で私の耳に優しく触れた。


その感触に、身体がビクッと跳ねる。


「大丈夫。

怖くない…。

怖くないよ…」


何度も大丈夫だよと言いながら、湊君の大きな手が私の後頭部をそっと引き寄せる。


その手はスルリと移動して、私の髪や耳や首を優しく指先で撫でていく。


その手がまるで魔法のように、私の心を落ち着かせてくれる。


ドキドキはするけど、


怖くはなくて。


むしろ心地良くて。


猫のようにうっとりと目を閉じた。



すると、湊君の親指が私の唇をスッとなぞって。



その数秒後。




唇が重なった。