トレモロホリディ

「なんだ?コイツ」


湊君がムクッと身体を起こす。


私もゆっくり上半身を起こした。


「この猫ちゃん、湊君の顔と肩の間で寝るのが好きだったでしょう?

だから、甘えてるんじゃないかな?」


湊君が猫ちゃんを飼っていた頃を思い出して、思わずクスクスと笑ってしまう。


だけど、当の湊君はぶぅと頬を膨らませている。


「うー。お前、邪魔だ…」


可愛いけど、憎たらしい。


そんな視線を猫ちゃんに送る湊君。


「あっ、そうだ。

美菜ちゃん、この部屋の鍵どこにある?」


「鍵?

鍵ならその下駄箱の上に…」


なんで鍵の話なんかするんだろうと、きょとんと首を傾げていると。


靴を履いたままの湊君がスッと立ち上がり、私の部屋の鍵を手にした。


その鍵のキーホルダーを小指に上手く引っ掛けたまま、私に両手を伸ばして来る彼。


手の平を上にして、おいでと手招きをする。


よくわからないけど、とりあえずその両手に掴まった。


「よーっと」


そんな掛け声と共に、私も立たされる。


一体何が始まるのだろうと、目をパチパチさせていた次の瞬間。



「…………っ!」



なんと湊君が、私をまるで米袋でも担ぐように持ち上げた。


えっ、


えっ、


えーーーーー?