トレモロホリディ

猫ちゃんが眠ってしまったせいで、ミナト君は部屋に戻りたくても戻れないようだ。


さっきから特に会話はないけど、不思議と居心地は悪くなかった。


「ねぇ。

ミナちゃんの部屋って、なんか明るいよね。

これで昼間、眠れる?」


ミナト君がキョロキョロと私の部屋を見渡す。


「うーん。かろうじてって感じだよ。

でも、やっぱりなかなか寝付けないから、今度の水曜日に遮光カーテンを買いにいくつもりなんだ」


「え、どこの店に?」


「ほら。この近くの通りからバスが出てるでしょ?それに乗って家具量販店に行くつもりなの」


「バスで行けるっつったら……。

あ、わかった。エメラルドグリーンの看板のお店でしょ」


「そうそう。
オーダーカーテンでも、あそこならわりと安いから」


このアパートって古いせいか、インテリアの通販カタログじゃ、合うサイズがなかったんだよねぇ…。


「ねぇ、ミナちゃん」


「ん?」


「俺も行きたい。

一緒に行っていい?」


「え…?」


な、なななんですとっ?