トレモロホリディ

丼にふっくらとご飯を入れて、それに被せるようにふんわり具をのせる。


三つ葉はないから、もみのりで仕上げた。


出来上がった親子丼とお箸と冷たいお茶をお盆に載せると、私はドキドキしながらミナト君の前にコトンと置いた。


「おぉっ、すげえ!うまそう」


ミナト君が嬉しそうに笑う。


「あの、どうぞ。口に合えばいいけど…」


「じゃあ、遠慮なくいただきま~す。

あ、しばらくコイツ頼んでいい?」


そう言って私に猫ちゃんを預けるミナト君。


私は猫ちゃんを抱っこすると、そっとベッドに腰を下ろした。


その目の前でミナト君が、細長い指でお箸を手にして親子丼を口に運ぶ。


「ん~!うまっ」


無心に親子丼を頬張り始めるミナト君。


やっぱり、食べ方がどことなく子犬みたいなんだよね。


なんか可愛い。


その姿を微笑ましく見ているうちに、彼はあっと言う間に丼一杯たいらげてしまった。


「あーうまかった。マジでうまい」


満足そうに言って、ミナト君は残りのお茶を全部飲み干した。


こんなに喜んでもらえると、作り甲斐があるよね。