トレモロホリディ

「穂波さん。

やっぱコイツのことは、ミナトって呼んでやってー。

ミナちゃんって、女の子みたいだよ」


赤髪君がケラケラと笑う。


「ごめんねー。

ミナト君って可愛いから、ついミナちゃんって呼びたくなっちゃうのよ。

紛らわしいし、これからはミナト君って呼ぶね」


穂波さんもクスクスと笑う。


な、なるほど。


金髪の彼は、ミナトっていう名前なのかぁ。


恥ずかしそうに頭を掻くミナト君を横目に見ながら、私は厨房へと向かった。



「ミナちゃん、ごめーん。

ご飯と味噌汁お願いできる?

ご飯は多めにしてあげてね。

よく食べるから、あの二人」


お菓子みたいな色をしたふっくらした玉子焼きを焼きながら、穂波さんが言った。


私は早速お茶碗を手にして、炊飯器の前に立った。


大盛りのご飯かぁ。


きっとお値段変わらずで、サービスなんだろうな。


穂波さんって人が良過ぎる。


ちゃんと利益が出ているのかなって、ちょっと心配になったりする。


「あの人達って、常連さんなんですか?」


「うん、そう。週に何度も来てくれてるよ。お得意様なの」


ふぅん。


そうなんだ。


こんなに朝早く来るって、これから出勤なのかな?


いや、有り得ないな。


きっと仕事帰りなのだろう。