部屋に入ると、テーブルの上に置かれたスケッチブックと色えんぴつが目に入った。


「湊君、これって…」


「うん。絵を描いてたんだ」


にっこり笑いながら、チェアに腰かける湊君。


「俺の方が先に帰るでしょ?

美菜ちゃんが来るまでの間、これからは絵を描こうかと思って…」


「ほんと?それはいいことだよー」


思わず向かいのチェアに座った。


そっかぁ。


湊君、また絵を描く気になったんだ…。


テーブルの上に置かれたスケッチブックを眺めているだけで、自然に笑みがこぼれてしまう。


どうしよう。


すごく。


嬉しい…。


「どうしてそんなに笑顔なの?」


「え…?」


湊君がニコニコしながら、私の顔を見ている。


いけない。


顔が緩み過ぎてたかも?


「あ、えと。

だって。

また絵を描き始めてくれたのが、嬉しいから…」


あんなに上手なんだもの。


好きなことなら。


どんどんやって欲しいって思うから。


「美菜ちゃんは、優しいね」


目を細める湊君に、ボッと顔が熱くなった。


ど、どうしよう。


話すたびにいちいち真っ赤になっていたら、好きって気持ちがバレちゃうよー。