トレモロホリディ

「どうしたの?美菜ちゃん」


壮真君がギョッと目を見開いている。


「え?な、何?」


「だって…。


泣いてるよ」


「えぇっ?」


ハッとして目の下に手を触れると。


いつの間にか、頬が涙で濡れていた。


「あ、れ…?

なんで?

勝手に涙が…」


どうしたんだろう?


泣くつもりなんか全然ないのに。


「あーーー!壮真君!

美菜ちゃんを泣かしたわねー!」


店の奥で休んでいた穂波さんが、厨房から顔を出した。


「ち、違うよ!

泣かしてなんかないって!」


必死に弁解する壮真君。


「でも美菜ちゃんが泣いてるじゃないの!」


穂波さんが珍しく怒ったような顔をしている。


あわわわ。


ここは私が、ちゃんと説明しなきゃ。