トレモロホリディ

はたから見たら、全然そうは見えないのに。


自分に自信が持てない人って、実は案外いるのかもしれないなって。


なんとなく、そんなことを思った。


「美菜ちゃん…」


「ん?」


「お願いがある…」


「なに?」


湊君が私にお願いって何なんだろう?


「あのね…。


ぎゅってしてほしい」


突然そんなことを言う湊君に、心臓の鼓動が急激に速くなっていった。


「えっ、あの…」


「ダメ?」


ウルウルした瞳で、私を真っ直ぐに見つめる湊君。


うっ。


やっぱりあの猫ちゃんにそっくりだ。


この瞳に、私はどうも弱いらしい。


私はゆっくり立ち上がり、ドキドキしながら湊君の近くに立った。


そっと両手を伸ばすと。


椅子に座る湊君を、そっと抱きしめた。